社会復帰概論

むずかしいです

2020-01-01から1年間の記事一覧

晴れと褻

僕が今死ねば、挽歌には「おもしろかりし人」なんて詠まれることだろう。一方僕は自分をとてもつまらない人間であるとも理解している。これらは対を成す思想ではなく、共存するものだ。だから勿論、僕は前者にも納得する節がある。簡潔に言えば、つまらない…

六月病とクーベルチュール

「終点ですよ」 何かが僕の肩を触り、僕は目を覚ました。 車掌と思しきその人は、透き通った灰色の声でそれを言い、僕が目を開いたことを確認するや否や何処かへ去ってしまった。 ああ、乗り過ごした。酔ってもいないのに朦朧としている意識のなかで、かろう…

「特別」

かつて、僕は目立ちたかった。 かつて、僕は特別でありたかった。 かつて、僕は完璧でありたかった。いま、僕は目立たざるを得なくなった。 いま、僕は異常を手にした。 いま、僕は不随だらけになってしまった。 そんな惨めな、人間の出来損ないの痴話である…

夕方はいつも釣瓶落とし

「今泣いた烏がもう笑うた」 小さい頃くるくると表情を変えていた僕を、祖母がよくこう言って笑っていた。 半袖がまだ少しよそよそしい夕方に雲が漂然と棚引いているのを見て、何となくそれを思い出した。清澄なオレンジ色の風に服が軽やかに踊る涼しさが心…