社会復帰概論

むずかしいです

2019-01-01から1年間の記事一覧

Error 404

お前絶対ドラマーやろ。という人が御堂筋線のなんば駅を降車する人の流れと逆さまに歩いてゆく。その手は交差したりしなかったりしながら、太腿でリズミカルな音を鳴らしている。人の振り見てなんとやらとはよく言ったもんで、僕がかえって独りで恥ずかしく…

週記6 放蕩

南森町に深夜営業をしている喫茶店を見つけた。平日は28時まで、休日は26時までやっているらしい。鼻腔を突く珈琲の香りと目の前に並ぶ臙脂の椅子。しゃがれた木材の音が耳をくすぐる。窓外には烏の羽根のような黒。将来はこの辺りに住もう。そう決めて相手…

週記5 夏への小径

先週は大学に一度も行かんかった。なんならその前の週も多分行ってない。その辺はよく覚えとらん。でも僕は友達に、大学に行った、と嘘を吐いた。今期こそ、今期こそは本当にただの怠慢で大学に行「か」なかったから。そして、それがバレるのが純粋に恥ずか…

週記4 色恋(恋の色)

午前3時。僕は少し冷えすぎた厨房で電子レンジの前にぷらぷら立ち尽くしている。レンジの中では、加熱されすぎたタピオカミルクティの容器が喉元に風穴を開けて血を吹き出させていた。レンジの中を黒々と汚す鮮血。何者かに膝を裏から突かれたみたいに、かく…

週記3 二律背反

すっかり、陽がぽかぽかと射すようになってしまった。路傍には、南国情緒あふれる、鮮やかなピンクの花が咲いている。パチンコ屋の新装開店セールを彷彿とさせられながら、それに近寄って、匂いを嗅いでみた。南国の香りはしなかった。なにくそ、と腕まくり…

週記2 旅がえり

大学の健康診断を受けに、わざわざバスで30分かけて京都の西北、桂の地までやってきた。山の上にあるキャンパスよろしく、だだっぴろくて木々の緑が目に優しかった。ただ殺風景かというとそうでもなくて、なんなら食堂なんかは普段通っているキャンパスより…

休憩中

一時間の休憩の間に吐ける言葉にどれだけの価値があるのか知らんが、頭を占めて仕方ないことがあったのでちょっと書き殴ってみる。蚊が。飛んでいる。もうそんな季節になったということだろうか。気の早い蚊に目をつけられただけとか??刺されてみれば確か…

週記1 新生活の揺らぎ

みんなは中学校、それか高校の水泳の授業を覚えてたりするだろうか。僕らの影を真っ黒に切り出す凄烈な陽光。それで背を胸を灼きながら、こう言ってはなんだが、水遊びをしていたもんだ。夏の日、という感じでなんとも潔い。いっぽう僕は、曇りの日の方が好…

日本酒に託けて

バイト先の上司が携帯で取引先と何やら話をしている。その内容は発注ついでの世間話だし耳を傾けるまでもないんだが、ふと作業がてら目に留まったのが、彼が携帯越しにぺこぺこと頭を下げていたところだ。当然それは取引先の相手に向けたものなのだけど、真…

午前(中目黒)

ぷわぷわと、うーん、いや、ぽやぽやと? そんな午前を送っている、中目黒で。僕は喫茶店や珈琲店みたいな場所がとても好きだ。 あたふたと、日常を、過ごせば過ごすほど、この浮っついた時間が愛おしい。眼下に、目黒川と桜並木。ふむ、春だなあ。長閑……。…

煙草

いけないこと、というのは総じてやりたいことなのだ。謂わば禁断の果実。もともと楽しいことが、背徳感という鋭利な刃物を得て僕の心を貫く。動脈から吹くように血を流す僕はその情欲に逆らうことはできず、静かに失楽園を迎えるのみである。……、などと大袈…

城崎に旅する記

僕は小説を読むのが好きだ。旅行記のようなものはとりわけ好みである。作者自身の世界と、その人の作品中の世界との境目が曖昧になるからだ。そういう本を読んでいると、知らず主人公に自身を投影してしまったりして、それもまたおもしろい。自分の世界と作…

帰り道

神戸の街には縦に横にとバスがあれこれ走っている。海沿いから北に上ればすぐ山になるので坂が多いのだ。バイト先の目の前にもバス停があるのだけれど、1時間に1本来るかどうかという寂しさなので、僕は普段最寄りの駅まで歩いて帰っている。今日も、バスを…