社会復帰概論

むずかしいです

週記5 夏への小径

先週は大学に一度も行かんかった。なんならその前の週も多分行ってない。その辺はよく覚えとらん。でも僕は友達に、大学に行った、と嘘を吐いた。今期こそ、今期こそは本当にただの怠慢で大学に行「か」なかったから。そして、それがバレるのが純粋に恥ずかしかったから。
みんなは何のために大学の単位を取るのだろう。何のために生きてるんだろう。そんなの僕にはわからん。僕はやりたいことをやるために大学に来た。その結果、やりたいことが放蕩であり散歩だったとわかっただけだ。親には申し訳ないけど、1000万かけてもらって僕は、自分が高等遊民気質だということに気づいただけだった。

それでも、大学の敷地に入ることも無いではなかったわけで、うだうだと足を向けた時の帰り道。大学の目の前にある大きな交差点に西陽が眩しい。その南西角にある青の主張が強いドラッグストアの前を通り過ぎて、ふと身震いするような寒気がした。風邪か妖気か、と思われたがそれは文明の利器であった。つまり店が空調を効かせていたのだ。この前通ったときは暖房がかかっていたような気がしたのだが……。
電車まで時間があったのでゆらゆらと陽光をかわしながら駅まで歩いた。再開発の都合で一時暖簾を下ろしていた煽情的な飲み屋さんが、路地の奥にもう一度店を構えているのを思い出した。店内は赤や黄などの、強い暖色を中心に華燭絢爛で、情報が氾濫している。あの身につまされるような、一方で烏合の衆のような、或いは歌舞伎町の一角のような場所が僕はとても好きだ。あふれた情報がみだりになだれ込んできて日々のぐだぐだを端にぷいっと追いやってくれるのだ。刹那的で頽廃的な生き方をするにはもってこいの場所である。

バイトがあるので店を出て、そのまま僕はやおら電車に乗った。鮮やかに染まった橙の袈裟を着た、タイかな、東南アジア系の僧が席に座っていた。ぐわん、と目眩がした。僕はその僧の後ろに座り、目眩に任せて数十分、時間旅行をすることにした。